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以太以外

病名は人間性や夕野分 以太

光森裕樹『山椒魚が飛んだ日』書肆侃侃房

プレスバターサンドを貰った日、光森裕樹『山椒魚が飛んだ日』書肆侃侃房を読む。〈牛飼ひが連れて歩くは購ひし牛、売りにゆく牛、売れざりし牛/光森裕樹〉最後の七が残る。横書きだと分からないけれど縦書きで中黒ではなく読点にすると短歌の重心が右にズレている気がする。けれど歌人の感覚では気にしないのか。〈島時間の粒子を翅からこぼしつつ空港跡地は蝶ばかりなり/光森裕樹〉南洋の空港跡地という穏やかな時間、〈其のひとの髮しろき冬、よかつたと思ふにいたる名はなんだらう/光森裕樹〉命名したことのある人ならこの八十年先の想像は感じるところあり。〈子の背に耳あてて聞くみづからを上書き保存する駆動音/光森裕樹〉生きていて、よかった。

もよりえきと呼びゐし駅舎に一礼をして返す名よかぜの笹塚 光森裕樹