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以太以外

病名は人間性や夕野分 以太

詩政鼎談序章

(意=意遠、以=以太、甲=甲太郎

 では、同紙諸君はじめようか。では、まずこの詩政紙「沈黙交易」をはじめたきっかけについてから。出会いだね。
 意遠さんと以太さんは同じ班でしたっけ。
 そう、意遠さんが先輩で、配達の先生。
 この仕事のコツを教えてやったね。
 ですね。いらないことも教わりましたが。
 この以太君、この職業では珍しく言っていることがおもしろいんだ。こちとら月曜朝に必死で道順組立やってんのに「お手すきのところすみません」とまぬけ面で質問してきて。おもしろい奴だと思った。甲太郎さんと以太君は?
 休憩室で本を読んでいたら声をかけられて「岩波文庫を読んでいる奴とはともだちになれそうだ」って言われて話すようになりました。
 何読んでたの?
 『アナバシス』です。以太さんは労組新聞の俳句投稿などを知っていたのでかねてから話したいとは思っていました。

 昼に食堂で話すようになって。あと二、三回休日に食べ放題に行ったな。
 カレーと焼き肉。
 以太に読書会をやろうと持ちかけたらすぐ「甲太郎も誘っては?」と言ってくれた。それで三人行必有我師焉ってことで三人で読書会をやることになった。断片的文献なら読書会も短時間でやりやすいだろうということで『自省録』『人間的な、あまりに人間的な』『論理哲学論考』などを提案したけど以太君が、あまり人が読んでいない本がいいということで。
 状況派研究会を設立、『スペクタクルの社会』読書会を開催という運びに。
 用語が出るたびにシチュアシオニストオンライン文庫さんを参照してたね。転用とか漂流とか。
 あれは勉強になりました。ほとんど忘れてしまいましたが。
 それでいいんだよ、全部覚えて全部忘れていい。 読書会が終わって何か三人でできることがないかと意遠さんが言って、なにができるか話し合っていたら甲太郎が「短歌の世界だとネットプリントなんかがありますよ」と言って、意遠さんが「それ、いいね」と言って、ネットプリントをはじめようという流れになりましたね。
 うん、紅衛兵の壁新聞を継承するzineのさらなる継承としてのネットプリントとして受けとめたんだよね。
 あの、詩政紙「沈黙交易」の名前はどっから来たんですか?
 沈黙交易円城塔のコロナ禍日記「散木記」からの引用、この時期にはじめるネットプリントとしてふさわしいと思って命名した。そして、もともと読書会が政治と芸術の関係についての本についてのもので、君たち二人が言語芸術としての詩の人、対して俺はエスランティストだから政治的な言語、国際補助語エスペラントの政と組み合わせて詩政紙とした。農政とか林政とか郵政とか軍政といった言葉が好きだからその類型として。また、詩ー政、詩ー沈黙、詩ー交易、政ー沈黙、政ー交易、沈黙ー交易の6つの関係がぞれぞれずれた軸で対になるようにした。
 意外と考えられた命名だったんですね。
 口さがない人は詩だけでよかったのでは、などと言いますが。
 かもしれない。編集と組版だけで大変なのに執筆までするのは大変だからね。
        了

詩政鼎談の本編が掲載されているネットプリント詩政紙「沈黙交易」2022年12月29日号はセブンイレブン複合機で1月5日23:59まで「B2FSKLNC」にて、ローソン・ファミマ・ポプラの複合機で1月6日18時まで「H3ULY4QWTP」にてA4白黒2枚40円で出力できる。ただし1枚目のみ出力推奨。