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以太以外

病名は人間性や夕野分 以太

中島斌雄「樹氷群」『現代俳句体系』角川書店

久々の休み、中島斌雄を学ぼうと思う。〈ニコライに寒月かくれ坂となる/中島斌雄〉御茶ノ水ニコライ堂、月が動いたのではなく作中主体が坂を動き月が隠れた。〈吹雪きつゝ歩廊の時計みな灯る/中島斌雄〉人工の灯が吹雪を照らす。〈手に触れしポストの口も夜霧かな/中島斌雄〉このポストは差出函、街路の景だろう。〈シネマ出て夜の街淡き雪積める/中島斌雄〉映画鑑賞中に雪が積もったのだろう。自分の変化と街の変化とが共鳴していく。〈稿成らず黒く巨いなる夜の蠅/中島斌雄〉肥った夜の蠅は鬱気だろう。〈柚子を提げ傷兵とほき北へ去る/中島斌雄〉橙色が勲章のように光る。〈蟋蟀澄むかゝる地下鉄の壁ぬちに/中島斌雄〉蟋蟀はちゝろ、地下鉄はメトロとルビ、近代的交通手段に紛れ込んでしまった秋。〈林檎園妻が林檎を剥く音のみ/中島斌雄〉楽園感がある。