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以太以外

病名は人間性や夕野分 以太

奥坂まや『妣の国』ふらんす堂

長靴にゴムを塗った日、奥坂まや『妣の国』ふらんす堂を読む。〈曼珠沙華茎に速度のありにけり/奥坂まや〉茎の直線性を「速度」とした妙手、〈まつすぐに此の世に垂れてからすうり/奥坂まや〉烏瓜の異界性を異界や他界などの単語を使わずに表現する。〈みんな顔のつぺり月の交差点/奥坂まや〉「月の」という省略が世界を広げるために効いている。〈いつせいにマスクをはづす一家かな/奥坂まや〉食事が一斉に来たのか、などと想像させる。〈内臓の重さ八重桜の重さ/奥坂まや〉内臓的なものと八重桜的なものとの共鳴が根底にある。

海は今しづかに月光の器 奥坂まや