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以太以外

病名は人間性や夕野分 以太

「夜さり」『八田木枯全句集』ふらんす堂

放送大学の「漢文の読み方」単位認定試験を受けた日、「夜さり」『八田木枯全句集』ふらんす堂を読む。〈鶴は引く人差指のあひだより/八田木枯〉水や砂の漏れるように指の間を引く。〈うすらひや空がもみあふ空のなか/八田木枯〉最初の空は薄氷のなかに、二番目の空は水のなかに。〈麥秋は鳥のはらわたまで達す/八田木枯〉単なる消化を光線のように叙述することで異界が生まれる。〈父老いて銀漢の尾を捌きをり/八田木枯〉老いて擬神に。〈月光ははばたき水に火傷せり/八田木枯〉月光だからこそありうると思わせる「水に火傷せり」で曲輪を飛びだした。〈肝臓も漆紅葉もよく濡れて/八田木枯〉赤色が並ぶ、「肝臓」に「濡れて」のイメージ喚起力が強い。〈日の暮をととのへてゐる障子かな/八田木枯〉いろいろあった一日を整然と並べる。

雁病んで畳の縁を通りけり 八田木枯