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以太以外

病名は人間性や夕野分 以太

「天袋」『八田木枯全句集』ふらんす堂

妻子が病にたおれたので足裏に湿布を貼り「天袋」を読む。〈卵黄のまんなかにゐる夏景色/八田木枯〉「ゐる」ということは作中主体の視線が卵黄のなか。〈ゆふぐれは紙の音する櫻まじ/八田木枯〉「紙の音」という視点、紙は夕の色を含みあたたかに。〈鳥は鳥にまぎれて永き日なりけり/八田木枯〉鳥が群にまぎれる緩慢さ、という春だ。〈小満の鳥はあうらを見せて飛ぶ/八田木枯〉小満は動植物が大きくなるけれど大きくなりきらないという二十四節気、蹠(あうら)にはその鳥の稚さがまだ残っているのかもしれないし、ひょっとすると霊気(アウラ)でもいいのかもしれない。

水澄みて空には隅のなかりけり 八田木枯