以太以外

蒼褪めた巨漢は笑う水澄んで 以太

塩見恵介『隣の駅が見える駅』朔出版

未明、『隣の駅が見える駅』を読んだ。〈リポビタンDの一滴昭和の日/塩見恵介〉ヒロポンにせよリポビタンDにせよ、昭和はそんなまがいものじみた薬物で動いていた。〈ゴールデンウィークアンモナイトする/塩見恵介〉巣ごもりの日々である。〈のりたまの黄色ばかりのこどもの日/塩見恵介〉あの鮮やかすぎる黄色にだまされるのはこども、しかも男の子くらい。〈惑星別重力一覧的蜜豆/塩見恵介〉不揃いだけど同一系にあるお豆さんたち。〈世の中をちょっと明るくする水着/塩見恵介〉世間を明るくするために脱ぐ女の子たちがいる。〈ライオンの体温洗う雷雨かな/塩見恵介〉「ライオンの体温」に獅子の威厳を観る。〈内陸の雨季を想っている西瓜/塩見恵介〉長野県とかの水を含んで大きくなって送られてきた西瓜なのかな。〈元カレを案山子にかえて六体目/塩見恵介〉魔女である。〈鈍行のドアの開くたび大晦日/塩見恵介〉夜の鈍行がいい。その暗さ、遠くの灯り、歳末。〈釣り人に背広が一人春夕べ/塩見恵介〉サボってきたのか、昔風の背広しかふくを持っていない人か。いずれにせよそういう面白そうな背景のある釣り人。〈赤く塗るティラノサウルス其角の忌/塩見恵介〉浮世絵に出てきそうな恐竜、其角を俳句恐竜と呼んでみたくなった。