以太以外

辷り台に脚を忘れた虫の闇 以太

毎日歌壇2021年11月29日

篠弘選〈面接に五人の子をもつ女採りき日々行列のできる食堂/鈴木圭子〉女にひととルビ、もりもり食べたくなる食堂だ。伊藤一彦選〈風船が部屋の真ん中漂って答えが出ない私に似てる/村山仁美〉映画の気球クラブみたいな、夢いっぱいで不安で情景。〈街角で見知らぬ犬になつかれて少し自分を肯定した日/友常甘酢〉そういう肯定のやりかたもある。〈凛として意志を貫く皇女には秋明菊の気品ありけり/松本文〉エルフの姫のような気品を持っていた眞子様米川千嘉子選〈次次と個性溢れる子が来たり学習塾の引き際に悩む/本宮菜菜〉嬉しい悩みでもある。加藤治郎選〈所詮みな息をしている骨と肉 やっぱりなにかおかしいと思う/人子一人〉諦念のような懐疑のような。〈光の中ではどう動いてもおなじでわたしたちはとてもきれいな腕を/柳本々々〉闇でもそう言えるのかと考える。〈夜だけのふたりの部屋にあらわれるハノイの塔へ交互に崩す/長井めも〉確かにハノイの塔には棒が三本あるから「交互に」だ。異様さ、がある。