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以太以外

病名は人間性や夕野分 以太

黛まどか『北落師門』文學の森

噴水へのこだわりと季節への哀惜が感じられる。噴水は吟行地にあるのかな?〈春の旅島が寄つたり離れたり/黛まどか〉動く船を定点として航路から観察している。旅の躍動感がある。〈青空に触れて噴水折れにけり/黛まどか〉重力の存在を忘れた主観からの知覚としてのおもしろさ。〈囀を残して発てり只見線黛まどか〉また只見線に乗りたくなる。〈青空のどこが弛み梅香る/黛まどか〉やはり冬から春へ、はゆるむでしょう。〈荒星のなかより夜間飛行の灯/黛まどか第一次世界大戦のあと空軍の職を失った飛行機操縦士たちの、危険な夜間飛行へ賭ける勇気とその陰の悲哀を思う。〈蝶ひとつ力のかぎり凍てにけり/黛まどか〉「力のかぎり」という肯定表現が切ない。〈がらくたに春の夕日の載つてをり/黛まどか〉がらくたへの優しい温度の目線がある。〈ていねいに眼鏡を拭いて緑の夜/黛まどか〉噴き出る樹脂に鏡面が汚れる感じがよく出ている。〈朴葉みそ焦がして冬の旅惜しむ/黛まどか〉旅館の食事だろう。〈初島へ航跡伸びる花みかん/黛まどか〉花みかんの白があることで海が鮮やかに映える。〈冷房の隅々にまで女将の目/黛まどか〉よく気が利く女将の宿だろう。

父の日のことさら白き雲ひとつ 黛まどか