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以太以外

病名は人間性や夕野分 以太

中日歌壇2021年2月7日

島田修三選第一席〈豆を炊く香は部屋に満ちこの先は寺山修司はずっと年下/外山菊絵〉他の歌人や詩人の亡くなった齢を知りたくなった。第二席〈電話きて母の仮病に逢いにゆく青空のような嘘頷きに/小桜一晴〉昔は逆だったのかも。第三席〈深き秋色の褪せたる広辞苑に弟の引きし線の新し/八木儀一〉だんな言葉に線を引いたのか。小島ゆかり選第一席〈冬の日に陽の照り出でて機の影はカーテンの波渡りてゆきぬ/黒崎晃一〉常緑樹の影だろう。第二席〈天使とも悪魔とも言われ雪は降るただしんしんと雪としてふる/上農多慶美〉益鳥害鳥益虫害虫の話とも通じる。〈ベビーカーに乗らぬと決めて一歳ははと見て駈ける石見てしゃがむ/岡本洋子〉自我が芽生えたときの幼児は鳩のように気儘で石のように頑固。