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以太以外

病名は人間性や夕野分 以太

「鏡騒」『八田木枯全句集』ふらんす堂

雨の日、「鏡騒」『八田木枯全句集』ふらんす堂を読む。〈大冬木そらに思想をひろげたる/八田木枯〉純粋な論理である思想は、冬木の寒々しさに似る。〈蝶を飼ふ人差指はつかはずに/八田木枯〉人差指は対人のための指ゆえに蝶には行使しない。〈春よりもわづかおもたきかすていら/八田木枯〉春とカステラの重さ比べ、甘さや穏やかさを比較する。カステラの重さはそんな曖昧さ。〈原爆忌折鶴に足なかりけり/八田木枯〉原子爆弾による身体の喪失を思わせ、かつ千羽鶴により現実的に起こりうる事象の取り合わせ、しかし意外さ。

鶴のこゑ繪具をしぼりだすごとく 八田木枯