以太以外

蒼褪めた巨漢は笑う水澄んで 以太

金子兜太『詩經國風』角川書店

〈おびただしい蝗の羽だ寿ぐよ/金子兜太〉蝗は飢饉を招きかねない。でも寿ぐ、自然のありのままの動きとして受け入れる大きさ。〈雲も石もいない山なり現存す/金子兜太〉ただ山としてそこにある。〈月が出て美女群浴の白照す/金子兜太〉と〈渚辺に若きらの尻みな黄菊/金子兜太〉、人体という存在はただ美しいだけ。〈鰈は血真っ黒な日本海明けて/金子兜太〉黒さのなかに蠢く血、生命たち、また朝が来る。〈冬の神「司寒」に捧ぐ韮の青さ/金子兜太〉韮ではなく韮の青さを捧げるというのが肝だ。神へ捧げるのは色だけでいい。ものは人が腹を満たす。〈歩みゆくや稲妻片片と散りぬ/金子兜太〉稲妻を物体として捉える、片片と。