以太以外

蒼褪めた巨漢は笑う水澄んで 以太

中日歌壇中日俳壇2021年5月30日

島田修三選第三席〈故郷で家一軒を売るチラシ田畑と山のおまけを付けて/神戸隆三〉〈黄変の七円ハガキに「新聞で短歌を見た」と恩師の太字/村田修〉七円葉書に切手を五十六円分貼りたしたのだろうか。〈華やかに気取りたい吾と実齢が鬩ぎ合ってる初夏のブティック/後藤幸子〉何歳までも。小島ゆかり選第三席〈これまでになくしたものあきらめたことすべてが光るプラネタリウム/山本織〉そんなプラネタリウム、行きたい観たい。〈家事はじめ気づくピーマン、トマト、キャベツ野菜の断面美しいこと/山田真人〉料理に慣れるとそのことを忘れてしまう。

朝日歌壇

馬場あき子選〈もう四月もう二年生キャンパスで一年生を部活に誘う/松田わこ〉「もう」のリフレイン。これは佐佐木幸綱選第三首と高野公彦選にも。〈それはもう見事に白き灰となり母一世紀を走り抜けたり/川野公子〉焼かれたのではなく走り抜けて摩擦で剥がれ砕けて灰となったような勢い。佐佐木幸綱選〈掌の上に止めた時間をふと浮かせ鋭く放つ石川佳純/前川泰信〉卓球の球を時間と呼ぶ。〈葡萄畑の先に墓標の群立ちて生死の境界一メートル足らず/西向聡〉墓標の群を死者の街と捉えた。〈手に余る田んぼの借り手見つかりぬ若き異国の大き手の男/毛涯明子〉手に余り大き手へ。これは永田和宏選にも。