以太以外

蒼褪めた巨漢は笑う水澄んで 以太

白井健康『オワーズから始まった。』書肆侃侃房

白井健康『オワーズから始まった。』書肆侃侃房を読む。〈三百頭のけもののにおいが溶けだして雨は静かに南瓜を洗う/白井健康〉南瓜という存在のどぎつさが雨に洗われる、そのどぎつさのままに。〈自販機のボタンをみんな押してゆくどんな女も孕ませるよう/白井健康〉オートマチックな恋愛、すべてはボタンを押すように恋愛の掟に則り手当たり次第射精に至るだけだ。〈プテラノドンの影がゆっくり過ぎてゆくザザシティからプレスタワーへ/白井健康〉ザザシティは私の日常語だけれど、他市の人はこの固有名詞をどう捉えるのかを知りたく思う。ただの擬音となるかもしれない。〈蟷螂の交尾を指でつついてる海を飛べない少年である/白井健康〉交媾と繁殖への願いが「海を飛べない」という修辞の鮮やかさに秘められる。

砂山に月の卵をうずめては孵化するまでを春と呼びたい 白井健康