コメダ珈琲で読売新聞の静岡版を手にとった。渡英子選佳作〈蝶になり肩に何度もまといつくお前が誰かすぐに分かるよ/大庭拓郎〉評は蝶が死後の作中主体でその蝶が「お前が誰かすぐに分かるよ」と言っていると書く。そうなら永遠の相から見ている蝶だ。もちろん作中主体が蝶の前世を知って語りかけているとも読める。入選〈過ぎてゆく時間は老いることなきや目覚めし部屋に雨垂れの音/岩田実〉「老いることなきや」が雨音も相まって何やら思索的である。入選〈やうやくに二桁となる感染者日記にしるす六月二十日/名波幸枝〉そんな減っていた日もあった、第六波と第七波のあいだ。忘れていたけど。入選〈右腕に13506の数字あり患者ナンバー腕輪がわりに/山口文〉富士市におけるコロナ患者の識別番号だろう。石田郷子選秀逸〈幼子の手に余るなり大トマト/中嶋倫夫〉三歳くらいかな。入選〈東京の玻璃玻璃玻璃や大夕焼/森本幸平〉東京の高層ビルに映った夕陽か、中七がユニーク。