以太以外

辷り台に脚を忘れた虫の闇/以太 ※リンク・引用自由

所以26

  • 政治信条を問わず、舌鋒鋭く他者を攻撃する人の論理を無力化したいんだと思う、私は。銃器は無力化できないけれど刀剣なら可能。
  • 〈むしろここまで男に厭はれ嫌はるる女ゆかしもあはれ「窓ガラス」/島田修三〉「魔法瓶」角川短歌2022.8、これはガラスの天井?
  • 〈このひとはもう死にたるか生きゐるかおもふを止めて録画見てをり/米川千嘉子〉「ぽえむ、ぱろうる」角川短歌2022.8、芸能人も多くの人が死に、多くの人が自死した。
  • 〈北上の山塊に無数の襞見ゆる地表ひとしきり沈痛にして/佐藤佐太郎〉『佐藤佐太郎歌集』岩波文庫、「地表ひとしきり沈痛にして」が難しい。その色彩や形状の険しさを見ている作者の心に沈痛さが生まれるということだろう。
  • 〈とりかへしつかぬ時間を負ふ一人ミルクのなかの苺をつぶす/佐藤佐太郎〉『佐藤佐太郎歌集』岩波文庫、孤独な営為は過去を振り返る時間となる。
  • 〈PCの画面あかるい外側でわたしたちの正常位の終わり/吉田恭大〉『光と私語』いぬのせなか座、パソコンの内側の性行為と外側の性行為、どちらが正常なのだろうか。ちなみに、正常位は後背位に比べて強姦するときやりやすい体位。
  • ぼくは、言語には二種類あると考えています。/ひとつは他人に何かを伝えるための言語。もうひとつは、伝達ということは二の次で、自分だけに通じればいい言語です。(吉本隆明『ひきこもれ』大和書房)
  • 8月17日(水)、浜松駅にうなぎいもストアができていて、うなぎいもモンブランソフトクリームなぞを売っていた。どこで座って食べる?
  • 〈蝶がゐて地下に水路の合流す/田口鬱金〉「探傷」『俳句界』2022.8、いいなこれ。蝶の翅のつけ根めく合流地点。
  • 片目の神は、銅や鉄を精錬する古代の技術労働者が、炉の炎で眼を傷つけ、一眼を失したことに由来すると私は考えている。(谷川健一『鍛冶屋の母』河出書房新社
  • 弥三郎婆の話は浜松市の神久呂村神ケ谷にも伝わる。
  • 昔、弥三郎婆さといって、実に物凄い婆さがあった。額には幾条かの溝のようなしわがあり、顔は赤銅色をして、口は耳まで裂けていて、銀色の髪はいつでも肩まで流れていた。(『新版 静岡県伝説昔話集』(上巻)静岡県女子師範学校郷土研究会編 1994年 ③
  • ジブリ映画「もののけ姫」のサンの母親はエボシ御前ではないかという説*1があるけれど、その真偽はともかく土佐国野根山の大白毛の狼が崎浜の鍛冶屋の老母を食い殺して老母になりすました宮崎駿の根底にあったのはほぼ確実。そこで山犬モロの君のセリフ「森をおかした人間がわが牙を逃れるために投げてよこした赤子がサンだ! 」が意味を持つ。モロは鍛冶屋の母≒たたら場のエボシ御前を食い殺そうとしたのだろう。
  • 宮崎駿が語る『もののけ姫』エボシ御前の設定
  • 野根山の鍛冶屋の老母は、千疋狼・鍛冶が嬶とも。
  • 残りの狼が人語していうには「最早崎濱の鍛冶が婆々を呼来れ」と云しより暫くすると果して白毛の大狼、頭に鍋を冠り悠然潤歩し来り(
  • ジブリ映画「もののけ姫」は、鍛冶屋の母などの金属伝承や倭寇などの海人族(海の民)や遊女など、網野善彦民俗学もそうだが谷川健一民俗学も下敷きにしている。
  • 全身が鉄でできているが、ただ一ヵ所が肉身であるために、その箇所を刺されて殺されるという鉄人の説話が日本にいくつか残っている。(谷川健一『鍛冶屋の母』河出書房新社
  • →鉄人・平将門の弱点(肉身)であるこめかみ、つわりのときに鉄を食べた弁慶母と鉄人・弁慶の弱点である弁慶の泣きどころ
  • 名古屋で巻かれた連句冬の日」、野水の〈つゞみ手向る弁慶の宮〉へ〈寅の日の旦を鍛冶の急起て〉と付けた松尾芭蕉。弁慶の宮→鍛冶、弁慶の鉄人伝説が根底にあったか?
  • →この付を安東次男は「まったくお手上げなのである」「どうも釈然としない」と諦めている。ただ「句は刀鍛冶ときまっているわけではない。野鍛冶であってもよい」「弁慶に打たせるなら鼓よりも鉄がふさわしい」「力強い槌音には民俗の実情がある」と良い線はいっている。
  • 私は鉱山労働者が金属を精錬するので鬼と呼ばれたこと、また彼らが無法者でありながら、周囲と隔絶された生活を強いられていたことから、付近の農夫の女をかどわかすこともしばしばあったと想像する。(谷川健一『鍛冶屋の母』河出書房新社