以太以外

蒼褪めた巨漢は笑う水澄んで 以太

塩野谷仁『夢祝』邑書林

西部清掃工場を見学した日、塩野谷仁『夢祝邑書林を読む。〈噴水のむこうの夜を疑わず/塩野谷仁〉噴水のこちらの夜と噴水を通して向こう側にある夜とが異なるかもしれない、なんて思わせる夜の噴水の魔力。疑わずとは疑念ありということ。〈短夜のはるかなものに土不踏/塩野谷仁〉「はるかなもの」と大きく出て土踏まずと矮小に、夏の夜ならどこへでも足で歩いて行けそうな気になる。〈鳴けぬ虫きつといる筈虫しぐれ/塩野谷仁〉きっと自分もかつては「鳴けぬ」側だったのだろう〈啞蟬をいくつ囲んで蟬しぐれ/塩野谷仁〉も似た視点。〈ポケットに黒豹のいる二月かな/塩野谷仁〉二月の夜、忍びよるような静けさ。〈やわらかく剃刀つかう花の闇/塩野谷仁〉光に満ちた冷たさが花の闇と剃毛の肌に残る。〈青梅に触れれば遠き日の火傷/塩野谷仁〉疼くような青梅の瑞々しさは火傷の痕にも似て。

分別のなき日なり蝶真白なり 塩野谷仁
浜松市西部清掃工場