以太以外

辷り台に脚を忘れた虫の闇/以太 ※リンク・引用自由

穂村弘『水中翼船炎上中』講談社

中郷温水池公園へ赴いた日、穂村弘水中翼船炎上中講談社を読む。〈なんとなく次が最後の一枚のティッシュが箱の口から出てる/穂村弘〉この予感はよく当たる。そして最後の一枚をつまんでほじくり出す。〈口内炎大きくなって増えている繰り返すこれは訓練ではない/穂村弘〉新型コロナ・ウィルスも、繰り返すこれは訓練ではない。〈電車のなかでセックスをせよ戦争へゆくのはきっと君たちだから/穂村弘〉言われるがままおとなしくしていちゃダメだ、殖やせ。〈先生がいずみいずみになっちゃってなんだかわからない新学期/穂村弘〉いずみ先生が泉さんと結婚した。〈クリスマスの炬燵あかくておかあさんのちいさなちいさなちいさな鼾/穂村弘〉クリスマスどうのこうのよりお母さんの鼾がある方が日本の幸せである。〈金色の水泳帽がこの水のどこかにあると指さした夏/穂村弘〉さぁ金色の水泳帽を見つける夏の冒険のはじまりだ。〈ザリガニが一匹半になっちゃった バケツは匂う夏の陽の下/穂村弘〉「半」は生命の神秘。〈僕たちのドレッシングは決まってた窓の向こうに夏の陸橋/穂村弘〉その陸橋を渡ればきっと違うドレッシングに出会える、かもしれない。〈手書きにて貼り出されたる宇宙船乗務員性交予定表/穂村弘〉宇宙船が飛ぶ時代、おそらく星間移民船であっても掲示板に手書き文字という意外さ。〈蜂蜜の壜を抱えてうっとりと母はテレビをみつめていた。/穂村弘〉思わず観入ってしまって、その壜のとろめきは母のときめきのようで。〈うすくうすく波のびてくるこの場所が海の端っこってことでいいですか/穂村弘〉もしかしたらうすく波ののびてくるこの場所が海の中心かもしれないけれど、端っこである方がおさまりがいいので。

何もせず過ぎてしまったいちにちのおわりににぎっている膝の皿 穂村弘