以太以外

蒼褪めた巨漢は笑う水澄んで 以太

与謝野晶子『みだれ髪』新潮文庫

枇杷が発芽していたのを知った日、『みだれ髪』を読む。〈その子二十櫛にながるる黒髪のおごりの春のうつくしきかな/与謝野晶子〉いまの二十歳は子どもだけれど明治期の二十歳は年増である。その子は令和期では二十代なかばから三十歳までの感覚だろうか、それでも若く、少し世も知っている。ゆえに驕りは美しい。〈清水へ祗園をよぎる桜月夜こよひ逢ふ人みなうつくしき/与謝野晶子〉京都観光の高揚感とは何だろう。いまの新宿歌舞伎町でそんな高揚感を感じられるのだろうか。〈ゆあみして泉を出でしやははだにふるるはつらき人の世のきぬ/与謝野晶子〉心の稚さを肌の稚さへ喩える。〈こころみにわかき唇ふれて見れば冷かなるよしら蓮の露/与謝野晶子〉エロスを秘める唇肉の冷感で終わらせず蓮の露という景へ飛ばす。露、それは涙のようで。〈牛の子を木かげに立たせ絵にうつす君がゆかたに柿の花ちる/与謝野晶子〉牧歌的な、とは安易か。白が目に残る。〈手をひたし水は昔にかはらずとさけぶ子の恋われあやぶみぬ/与謝野晶子〉いつまでも変わらない恋なんてありませんよと諭すように。

やは肌のあつき血汐にふれも見でさびしからずや道を説く君 与謝野晶子