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以太以外

国は夜ずっと流れているプール 以太

抜井諒一『金色』角川書店

『金色』を読んだら元気になった。〈カーラジオ消して遠花火を探す/抜井諒一〉音で花火を探し、車で近づく。〈花火とは別の夜空へ帰りたる/抜井諒一〉花火の夜空より少し寂しいけれどあたたかい自宅の夜空へ帰る。〈目の前を運動会の砂の音/抜井諒一〉リレーが目の前を過ぎた、砂を蹴る音がした。〈マスクしてゐて口元を隠す癖/抜井諒一〉これは可笑しい。意味は特にないのに自然とやってしまう仕草。〈一灯に集まる闇や寒の雨/抜井諒一〉灯があるからこそその周囲の闇が際立つ、寒中だから、なおいっそう。〈おほかたは手の届かざる石鹸玉/抜井諒一〉しょぼん玉はできたらもう手が届かない、あるいは近寄る手が起こした風でさらに届かない遠くへ行ってしまうもの。〈風よりもかすかに重き落花かな/抜井諒一〉把握の美しさ。ゆえに風より下へ落ちる。〈二人乗り自転車過ぎて避暑地めく/抜井諒一〉日常を外れ無法地帯めいているのも避暑地の趣きか。

朽ちてゆくものの匂ひや秋の風 抜井諒一