以太以外

辷り台に脚を忘れた虫の闇 以太

立花開『ひかりを渡る舟』角川書店

〈セーラー服色のチューブを探してる一気に塗ってしまいたくなり/立花開〉セーラー服を着ていることの煩わしさなどがあるのだろう、だから一気に片付けたい。〈セーラーを脱いだら白い胸にある静かな風をゆるす抜け道/立花開〉も。谷間だろうか。風音が爽やか。〈深海に部屋ごと引きずり込まれてゆく孤独は蛸の容をしている/立花開〉孤独というものを触手をもつ生物、蛸と捉える。引っ付いたら離れないゆえに。〈夕焼けを返して光る教室の机の水面にだまってふれる/立花開〉光を反射する机のつるつるを水面と呼ぶ。教室に生徒の数だけ池ができる。〈明るすぎて冷たい浜辺 持ち切れぬものとして足跡を残せり/立花開〉持ちきれずあふれたものとして足跡を捉える感覚に惚れる。〈友人はノートに頬をかぎりなく寄せながらその影に詩を書く/立花開〉高校生のころの私もそうしていた。そうしないとそのままを書けない気がしていた。〈たのしい日をつないで生きる凍空の星座はそうして創られたらしい/立花開〉たのしいと言っているのに悲しげな星座譚。〈ただひとつの惑星に群がり生きたれどみな孤独ゆえ髪を洗えり/立花開〉惑星にほしとルビ、本当は髪を洗うこと以外のことをしたいけど、今はそれしかできないから。