Mastodon

以太以外

病名は人間性や夕野分 以太

きむらけんじ『圧倒的自由律 地平線まで三日半』象の森書房

きむらけんじ『圧倒的自由律 地平線まで三日半』象の森書房を読む。〈兄の古着で兄より育って家を出た/きむらけんじ〉「兄より育って」がおもしろい。〈黙って漁師継いで耳にピアス/きむらけんじ〉漁師町の元不良少年。〈その先で捨てるチラシを黙って貰う/きむらけんじ〉予め定められた未来を敢えてなぞる。〈夏の子の画用紙に水平線一本/きむらけんじ〉描きかけの一瞬をとらえる。しかし既に完成画でもある。〈前科はあるが噴水で待ちあわす/きむらけんじ〉「前科はあるが」はここで言わなくてもいい、でも言っておきたかった。〈返事はしたが声を出し忘れた/きむらけんじ〉ボディランゲージで返事。〈目覚まし二つかけて眠られぬ/きむらけんじ〉目覚ましの度が過ぎて常に目を覚ます。〈年の瀬に穴があるので穴をのぞく/きむらけんじ〉穴からは新年が顔をのぞかせるかもしれない。

顔見知りの高橋君は野良犬をしている きむらけんじ