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以太以外

病名は人間性や夕野分 以太

九堂夜想『アラベスク』六花書林

数がなかなか合わなかった日、九堂夜想アラベスク六花書林を読む。〈湖の死や未明を耳の咲くことの/九堂夜想〉湖は「うみ」とルビ、耳は夥しく咲く、湖の欠如を埋めようとするように。当然、音への希求はある。〈くちなしの破瓜にむらがる枝神ら/九堂夜想末社の位階低き枝神らは、梔子の安っぽく強いにおいに簡単に引き寄せられてしまうという戯画。〈野火はるか雲を敲けば蛇落ちて/九堂夜想〉雲から空からボトボト蛇が落ちてくる景が愉快、野火が遠くに見えるのもよい。〈月のみち喪のみな針をふところに/九堂夜想〉針が喪のしるしとなり月への支線を旅するのだ。