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以太以外

病名は人間性や夕野分 以太

佐藤文香『君に目があり見開かれ』港の人

三月の有給休暇取得は難しいと知った日、佐藤文香君に目があり見開かれ』港の人を読む。〈目薬の鋭利な水や夜の新樹/佐藤文香〉落ちる鋭利な水と枝先へ染みのぼり薫る水と。〈紫陽花や心は都営バスに似て/佐藤文香〉確かな順序による落ち着きを払った態度、〈夕凪にすこしむかしの怪獣は/佐藤文香〉スタイリッシュではない、着ぐるみのようなふてぶてしさ。〈冬晴れて君宛の手紙はすべて君に/佐藤文香〉不確かな郵便制度にまったく疑いを持たない、澄み切った瞳。

さへづりに濡れてはじめの樹へ戻る 佐藤文香