以太以外

蒼褪めた巨漢は笑う水澄んで 以太

大口玲子『トリサンナイタ』角川書店

サンタクロースへ手紙が届かなかった日、『トリサンナイタ』を読む。〈筆先を水で洗へばおとなしく文字とならざる墨流れたり/大口玲子〉「文字とならざる墨」という起こらなかった未来で規定されるものの描写に興味がある。〈イースター・エッグを包む薄紙を花びらむしるように解きたり/大口玲子〉「むしる」は楽しさ。〈花束はビニール袋に捨てられてそのわきにあをき泉湧きをり/大口玲子〉泉の青に花束のたぶん色とりどりが映える。〈男の子ですよと言はれひとごとのやうに曖昧に頷きたりき/大口玲子〉我が子とはいえ性別は確かにひとごとだ。出産後なら性別なんて二の次だ。〈指さして「みづ」と言ふ個に「かは」といふ言葉教へてさびしくなりぬ/大口玲子〉言葉を知って失うものがある。〈たかぶりて子は手を振れり消防車救急車ばかりのサービスエリア/大口玲子〉はたらく車が好きな子供と被災地へ向かう緊急車両の群の温度差がある。

一時間六百円で子を預け火星の庭で本が読みたし 大口玲子


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