以太以外

蒼褪めた巨漢は笑う水澄んで 以太

中村安伸『虎の夜食』邑書林

この以太以外を開設して二年経つ日、中村安伸『虎の夜食邑書林を読む。〈百色の絵具を混ぜて春の泥/中村安伸〉春の泥はこれから咲くだろう、芽吹くだろう様々な色をすでに百色含んでいる濁色。〈自転車の籠の中なる雪だるま/中村安伸〉「なる」、この勢いは、自転車の前籠に雪だるまだろう。〈星を踏む所作くりかへす立稽古/中村安伸〉禹歩。〈地球儀を地球でつくる花水木/中村安伸〉地球儀を地球でつくるというボルヘス的な地図作製の営為のほか、水と木とが五行説の二つであるゆえに花が第六となりそうな。花曜日ができるだろう。〈心臓を抜いてギターのできあがり/中村安伸〉ギターの原型には心臓があり血が通っていたというなら、弾かれるギターとは抜け殻か。〈レコードの上の軍艦夏来る/中村安伸〉黒々と鉄の軋む音。〈燃えるピアノの上に無疵の胡桃かな/中村安伸〉ピアノは燃えつつ鳴っている。その上に置かれた胡桃のように無疵でありたい、いや無疵であると信じたい。〈印度からお茶が来そうな梅雨晴間/中村安伸〉大航海時代のからりとした空。

いろいろなをんなのからだ遠花火 中村安伸