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以太以外

国は夜ずっと流れているプール 以太

岡本真帆『水上バス浅草行き』ナナロク社

〈教室じゃ地味で静かな山本の水切り石がまだ止まらない/岡本真帆〉がぎりぎりまで見つからなかった日、『水上バス浅草行き』を読む。〈にぎやかな四人が乗車して限りなく透明になる運転手/岡本真帆〉四人に対して相対的に透明へ近づいていく運転手。その過程で機械として次のバス停を案内したりする。〈もうキミが来なくたってクリニカは減ってくひとりぶんの速度で/岡本真帆〉クリニカは当時の歯磨き粉の商品名だろう。量が速度に置換される。〈お風呂から10分くらいまだ歩くけど4人はパジャマになった/岡本真帆〉入浴後の清潔と不清潔の狭間で迷いがあったのかもしれない。これからの10分で自分がどう変わりゆくのかという疑念。〈珈琲にたった一滴泥水が入ればそれは珈琲じゃなく/岡本真帆〉泥水が混ざるとコーヒータイムの時間として楽しんで飲めなくなるから珈琲ではなくなる。〈売春と言ってあなたが差し出した小さな白い花を買う春/岡本真帆〉ささやかで小さな隠語として。〈銀行の審査が下りない繋がれた犬を逃した春があるから/岡本真帆〉それは信用問題になってしまった。〈南極に宇宙に渋谷駅前にわたしはきみをひとりにしない/岡本真帆〉ライカもタロもジロもハチも気づかないだろう、自分たちが同じ「犬」と呼ばれる生命であることに。〈偽物の山手線の駅名を二人で挙げる4時のカラ館/岡本真帆〉「駒塚」とか「東反田」とか。

言い切れる強さがほしい「レターパックで現金送れ」はすべて詐欺です 岡本真帆