以太以外

辷り台に脚を忘れた虫の闇 以太

工藤玲音『水中で口笛』左右社

新聞社から電話のあった日、今や渋民村の工藤玲音から日本のくどうれいんになった工藤玲音の『水中で口笛』を読む。〈死はずっと遠くわたしはマヨネーズが星形に出る国に生まれた/工藤玲音〉マヨネーズの星形に宿命論を見る。設定がわざとらしくなくていい。〈五キロ痩せ猫が一匹わたしから消えてしまった、猫、おてんばな/工藤玲音〉ダイエットして一匹の相棒を失った感じがある。〈たわむれに月の磁石をつけられて大きな梨を抱く冷蔵庫/工藤玲音〉ぼこぼこの月とぼこぼこの梨の色彩の相乗効果で果実の観念がよく冷える。〈ふと特技が「迷路を書く」で「迷路を解く」ではないことに気付いてしまう/工藤玲音〉問題解決型ではなく問題提起型である。