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以太以外

病名は人間性や夕野分 以太

虚の自由

唐木順三は『無用者の系譜』筑摩叢書において西山宗因の虚について書く。

卽ち實の世界の常ならぬむなしさを身にしみて體驗したのである。(略)過去の重臣の位置に對比した現在の浪人のわび姿が、やがて、實に對する虛、和歌に對する寓言、連歌に對する狂言、卽ち實世間を茶化する俳諧滑稽の談林世界をよび起すことになるのである。無用坊の世界、無樂の樂、ひざをくづした世界である。(略)宗因が浪人を選びとつたのは尤もなことといはねばならない。卽ち現世の秩序からはみでた虛の世界、夢幻の世界において始めて戲言、狂句の自由をえたのである。「無用坊」となることによつて始めて詩人となりうるといふ條件がそこにあつた。

社会が大きく変化するときは虚の世界が繁るときだ。