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以太以外

病名は人間性や夕野分 以太

出口善子『娑羅』角川書店

新城市へ出かける日、出口善子『娑羅角川書店を読む。〈皹の手が犯人を追いページ繰る/出口善子〉犯人を知りたくてページを繰る。冬は紙で手を切りやすいし、手仕事の合間に読んでいるのかもしれない。〈純白の四葩に時間重たかり/出口善子〉「時間重たかり」とは時間に対する実感の密度が濃いこと。〈空席をまた振り返り扇風機/出口善子〉かつてその席にいた人を思い返すかのように。〈わが恵方円錐柱の赤に遮られ/出口善子〉円錐柱にはコーンとルビ、あたかも恵方を塞ぐかのように。〈諭しおり四角い柿を丸く剥き/出口善子〉角のとれた諭し方。〈地震の傷癒え小満の土匂う/出口善子〉小満とは湿潤療法の肉芽のように。