〈宇治川はやがて淀川夏あざみ/田丸千種〉宇治川と淀川では名だけで濁りも変わってきそうである。名前だけが違うだけなのに。〈水曜は週の真ん中虹立てり/田丸千種〉虹は水によってできることとアーチ状の虹の真ん中が盛り上がるかたちと、微妙なかかわりを感じられて巧み。〈ちやうど和光の時計台ほどの月/田丸千種〉取り合わせ加減が心地良い。〈みづうみに月を残して舟返す/田丸千種〉ものの措定も好き。〈新聞に増ゆる横書き漱石忌/田丸千種〉横書きは蟹行文字とも書くけれどそう書いたのは英文学者で漢文作者の夏目漱石だった。〈東京の空みな使ひ初茜/田丸千種〉そりゃあ「みな」だけれどそう言い切ること。〈夕東風やもう椅子だけとなるリフト/田丸千種〉人が去った、たぶんふたりは去った、そのことを「椅子だけ」だけで表現する。
