〈ポケットの中の銀貨の凍りつく/片山由美子〉布に覆われた、皮膚に近い、凍らないはずの銀貨も凍る、それほどの寒さということ。〈城濠を埋めつくしたる荻の声/片山由美子〉こういう句にときどきハッとさせられる。〈無花果に雨のにほひの残りをり/片山由美子〉雨の匂いに注目した着鼻点のよさ。〈すぐ分かる人の声より初電話/片山由美子〉これは昭和の電話感覚だ。〈覚えある声の近づく朧かな/片山由美子〉こちらの声はすでにもうこの世にないかも。〈帰省して一冊の本持ち帰り/片山由美子〉幼い時に読んだ本をもう一度読みたいときが人にはある。〈駅前のどこもよく似て冬の雨/片山由美子〉風景や没場所性についての句だろう。〈映るもの映さぬまでに水澄めり/片山由美子〉逆説的な形容のおもしろさ。
