〈花冷の昼映画館みなひとり/毬矢まりえ〉「みなひとり」の社会観がいい。〈小春日や臓器を持たぬぬひぐるみ/毬矢まりえ〉「小春日」が小気味良い。〈花ミモザ涙は数へらるる名詞/毬矢まりえ〉涙は数えられるという驚きがある。〈黄水仙ドールハウスのドール留守/毬矢まりえ〉-ha-u-suと-ru-suの押韻が心地よい。〈輝けるクリスマスツリー根を持たず/毬矢まりえ〉輝いているものが必ず地に足ついているとは限らない。〈巨大ビル建ち上がるまでたんぽぽ黄/毬矢まりえ〉壮大な建築現場とちっぽけな野の対比。〈玉子パック秋陽を十に小分けして/毬矢まりえ〉卵のないパックがなぜか転がっている景としておもしろい。〈夜長の椅子に恐竜柄エプロン/毬矢まりえ〉平和の家庭そのものといった感じ。
春土掘るいつか眠る日のために/毬矢まりえ
