以太以外

蒼褪めた巨漢は笑う水澄んで 以太

岡田一実『記憶における沼とその他の在処』青磁社

卸本町でアリィの冬と夏「内と外のリフレクション」を観て、俳句と工芸の融合について考えた日、岡田一実『記憶における沼とその他の在処青磁社を読む。〈闇鍋の闇を外せぬぬめりやう/岡田一実〉闇鍋の闇は趣向ではなく必要、だった。〈碁石ごと運ぶ碁盤や梅月夜/岡田一実〉ゴ音の頭韻に梅月夜が丁寧に付くつくり。〈夜を船のよぎる音聞く桜かな/岡田一実〉運河か河口か港か、大きな景から桜という中くらいの景へ、自己から離れたところに意識を飛ばし、それでいて自己の範囲を探るかのような。〈焼鳥の空飛ぶ部位を頂けり/岡田一実〉「空飛ぶ部位」を食するのは類感魔術めいた魅力がある。〈中庭を抜ける明るさ榠樝の実/岡田一実〉中庭は精神病棟によく似合う、さらにその只中にごつごつと榠樝の実。〈立つて食ふサンドヰッチや誘蛾灯/岡田一実〉夜のコンビニエンスストア。〈廃坑や莢蒾の実の雨を帯び/岡田一実〉捨てられる運命にある廃坑と生命力の繁茂とも言える莢蒾の実の奇妙とも言える対比。

室外機月見の酒を置きにけり 岡田一実


アリィの冬と夏、アルラ玄関