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以太以外

病名は人間性や夕野分 以太

西村麒麟『鴨』文學の森

『現代俳句』ティータイム欄に拙文「おとな乳歯」が載った号でそのティータイムの休止を知った日、西村麒麟文學の森を読む。〈獅子舞が縦に暴れてゐるところ/西村麒麟〉「縦に」が意外、秩序だっているように見えて実は箍が外れている。〈足裏のツボみな痛し花曇/西村麒麟〉反射区の図の鮮やかさが花のころ。〈黴の宿映りの淡きテレビあり/西村麒麟〉未だにブラウン管なのが黴の宿(昭和に建てられた)。〈枝豆は書き損じたる紙の上/西村麒麟〉紙の上だから枝豆は特別に扱われているのに特別感のない「書き損じ」。ただのおつまみ、添え物としての枝豆。〈帰宅して気楽な咳をしたりけり/西村麒麟〉人前では苦しそうに。〈舌の上にどんどん積もる風邪薬/西村麒麟〉粉薬、葛根湯の描写が巧み。水で流しても残りそう。〈夕焼の染み込んでゆく佃島/西村麒麟〉佃煮からの連想。

螢の逃げ出しさうな螢籠 西村麒麟