以太以外

空の色尽きて一月一日に/以太

山川藍『いらっしゃい』角川書店

八階にある谷島屋書店のカフェで山川藍『いらっしゃい角川書店を読む。〈ローソンのドアが手動で開けながら佐藤優の猫のことなど/山川藍〉は〈ローソンのドアが手動で/開けながら〜〉か。どうでもいいけれど佐藤優と猫の写真を見たことがあっても佐藤優の眼力しか思い出せない。〈イヤリング母からもらうなんだこれ中華のたれか何かついてる/山川藍〉中華料理が母との大きな思い出なのだろう。〈無職なる兄の自転車もう四半世紀も自転車をやっている/山川藍〉「自転車をやっている」とはたち漕ぎをされてきたのだ。少年の遠くに行きたい願望をいつも半分だけかなえてきたのだ。帰りも自力で漕がねばならんのだ。〈細胞よ全部忘れろ入れ替われ短い爪で頭を洗う/山川藍〉洗髪中って視覚を制限しているから考えなくていいことも考えてしまう。〈大騒ぎしてすみませんと唐突に言い大騒ぎした人になる/山川藍〉嘘でも言って反応されれば本当になる。〈「全女性」からはみ出してユニクロのブラトップなどおっぱいの蓋/山川藍〉全日本みたいな。〈きんとんの明るい黄色ごと箸を吸えば木の味ばかりするなり/山川藍〉あれすぐ融けてなくなるよね。〈愛知県図書館内に春が来て雑誌一冊読み上げる声/山川藍〉そんな狂気の春だ。

去る人がひとりひとりに置いていくアドレスの無いやさしい手紙 山川藍