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以太以外

病名は人間性や夕野分 以太

檜葉記(四)

第38回兜太現代俳句新人賞で私の「人曲」が最終候補十二作品に残り最終投票で五位だったと知った日、東海地区現代俳句協会青年部選の「翌檜篇」(23)『現代俳句』令和二年十一月号を読む。〈ため息の色と思へり虞美人草/村山恭子〉ちょっと情念の濃いため息、史記を踏まえている。〈あぢさゐの哀しきものの密集す/福林弘子〉〈ゆたかなる記憶ありけり蟬の穴/福林弘子〉は「哀しき」「ゆたかなる」が言い過ぎのようで、季語と絶妙に合いかつずれていて気持ちいい。〈水を差す男に揺れて水中花/八木茂都子〉「水を差す」が複数の意味にとれて良い、男女の関係とも読める。〈赤紫蘇のゆがいてただの葉に戻る/後藤麻衣子〉「ただの葉」という言い切りが快い。浜松市内の種物屋で、ちぢれていない赤紫蘇は愛知県独自の種で他では売っていないと聞いたことがある。