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以太以外

病名は人間性や夕野分 以太

石井英彦『炎』文學の森

謹呈された『炎』を読む。〈白い電車が梅雨の山へ入ってゆく/石井英彦〉ただならぬ電車に違いない。死者を乗せるような。〈化物の国をやさしく雲の虹/石井英彦〉「化物の国」と「やさしく」は人柄のあたたかさ。〈たましいとこころ和解す瓜曲る/石井英彦〉「瓜曲る」の屈折が愉快。〈ビジネスマン不穏な坂は夜芽吹く/石井英彦〉ビジネスマト芽吹くの取り合わせが大好き。夜の坂を振り返るスーツ姿の男を想像する。その顔も、生き方も。〈仰がねば空は語らず五月尽く/石井英彦〉意志さえあれば応えてくれる。〈埋めた海へビルか墓標か冬の靄/石井英彦〉変わりゆく世界への諦念のようなものを感じた。