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以太以外

病名は人間性や夕野分 以太

中日歌壇朝日歌壇2021年7月25日

中日歌壇

島田修三選第一席〈フォークダンス君まで廻るかそれだけが気掛かりだった遠き日のあり/藤井恵子〉隣を見ながらマイム・マイムを踊る。〈簡易局の入口の上に燕の巣笑みもて見上げ帰る客らは/吉田恵子〉糞が落ちてくるかもしれないから見上げる。小島ゆかり選第二席〈くじ運の悪き我ゆえアナフィラキシー当たらぬものと信じつつ打つ/磯貝雅人〉当たりはどちらか。〈身重ながら町の会計担ひし人初夏の美化の日ベビー連れくる/中條にむ子〉美化の日とは何だろう。

朝日歌壇

馬場あき子選〈「美しき戦いの終わり」とう文字が雨に濡れてる蘋果日報/今西富幸〉蘋果にりんごとルビ。ことばが消える。〈ガラス戸に「いらっしゃいませ」の文字残り閉店ながき村の理髪屋/内海恒子〉白の文字だろうか。だんだん風化して消えていく。佐佐木幸綱選〈マリトッツォ一つで緩む頬持てば行列厭わぬ夏至の日の午後/瀬口美子〉これぞマリトッツォ短歌である。高野公彦選〈好奇心・未読乱読・在野主義 立花隆氏が貫きしもの/今西富幸〉立花隆耳をすませばの雫のお父さんの声という印象が強い。永田和宏選〈河童忌はありて河童はあらざるに夏の部もつとも厚き歳時記/庭野治男〉芥川龍之介の河童をもう一度読んでみよう。