以太以外

蒼褪めた巨漢は笑う水澄んで 以太

中日歌壇朝日歌壇2021年7月11日

中日歌壇

島田修三選第二席〈補聴器を初めて付けて食べる時キャベツ噛む音すさまじきかな/松岡準侑〉骨伝導音も補聴器では大きく聴こえるのか、知らなかった。〈「アカシアは萌え」で始まる女子校歌口ぱくだった音痴の私/後藤幸子〉先生から口パク指示が出ていたり。〈ひ孫まで生まれんと言うその昔琵琶湖に消えし十五の友よ/宮尾美明〉琵琶湖で何があったのか気になる。小島ゆかり選第三席〈キッチンとも厨とも違う台所にあお豆ご飯の匂い立ちおり/竹内美穂〉「キッチンとも厨とも違う」が面白い。たぶん昭和風のペコペコの金属板とか花柄とか。〈びっしりと実を寄せ合っている葡萄よかったなぁ人間ではなくて/梅村和生〉人は密を恐れるようになった。

朝日歌壇

「さん」「氏」付けは大事である。高野公彦選〈服重ね寒さに耐えた周庭さん沈黙の語る自由の重さ/人見江一〉やはり沈黙に注目。「さん」付けは偉い。〈「愛」には有り「名曲」には無き賞味期限 昭和歌謡を台所で歌う/江口康子〉うまい。永田和宏選一首目〈沈黙が全てを語つてゐるやうなフラッシュ浴びる周庭氏の貌/桑内繭〉周庭氏にアグネスとルビ、やはり沈黙に。「氏」を付けて偉い。〈風音のしずかにつづく夜零時カーテン寄せれば眉月の見ゆ/児嶋きよみ〉梅雨の荒天続きのなか、ホッとする夜。馬場あき子選第三首〈痛風で腫れ痛む足白衣着た研修生等が触りてゆきぬ/梶正明〉もはや見世物、痛いのに。〈苦しそうな声上げながらたくさんの隠し事飲み込むシュレッダー/山田真人〉昨日私も隠し事をシュレッダーにかけた。〈一死二死憤死に死球おもしろくやがて悲しき野球の用語/武藤恒雄〉佐佐木幸綱選〈香港の周庭さんの沈黙に語らぬことの重さ推し量る/三ツ木稚子〉やはり沈黙に。そして「さん」付け。〈「南国風容姿の方歓迎」と夏ならではのバイトの募集/上田結香〉タピオカドリンク屋さんかな。沖縄奄美の人有利。