以太以外

蒼褪めた巨漢は笑う水澄んで 以太

中日歌壇2021年10月10日

 

島田修三選第三席〈無いはずの鍵はいつでもここに有り有るはずの庭は静かに朽ちる/倉知典子〉家は売るはず、庭は手元に残しておくはずだったのだろう。ままならないのが人生。〈凡庸な自分の歌にへこむ日はシンクを磨きやかんも磨く/二ツ木美智子〉凡庸こそが尊い小島ゆかり選第一席〈バッサリと凌霄花は剪られゐてポストはやはり定位置にあり/山下豊子〉郵便を差す側としては、はやめに剪定しておいてほしい。第三席〈棄て難き情念だれかが棄ててゆき谷にひと群れ曼珠沙華咲く/北村保〉棄て難き情念は触れ難き情念でもある。〈やわらかさ残るこころを持つ夫 通夜の翌朝散歩を休む/新谷華央里〉志村貴子の『敷居の住人』を読み返しているけれど、そんな「やわらかさ」残る心はいつまでも持っておきたい。