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以太以外

病名は人間性や夕野分 以太

中日歌壇2021年10月3日

 

島田修三選第一席〈就職の決まらぬ悪夢に目が覚めて年金制度暮らしの我と気がつく/坂神誠〉失業時代かもしれない。金が途切れるかもしれないという恐怖が日常生活者にはある。〈旅姿した牧水が徳利さげまだ佇っているこんな山路に/梶村京子〉これは門谷の鳳来寺参道にある保田井智之さんの若山牧水像だろう。〈朝顔の種ことごとく摘み終へて来年の夏を袋に納む/冬森すはん〉夏の匂いを袋に納めた。小島ゆかり選第二席〈葫蘆島の亀の子島よ恙無きや七十六年経ちて思ほゆ/伊藤達夫〉終戦のとき何歳だったのだろう。第三席〈スカートの裾翻し夏が往くポケットから赤とんぼを出して/小川真記〉スカートにポケットがあった幼少期への懐旧だろう。〈社畜とは若者たちの造語とか我らの頃は愛社といいしが/磯貝雅人〉ありのままより愛社という皮肉の効いた表現の方が大人である。

 


鳳来寺の若山牧水像