中日歌壇*1は愛知歌壇と言ってもいいくらい愛知県の入選者が多い。中日新聞の購読者も投稿者も愛知県が多いからだろう。もちろん静岡県・岐阜県・三重県・石川県*2の入選者もいる。理論上は長野県・和歌山県・富山県*3・福井県・滋賀県の入選者もいてもおかしくないけれど稀だ。島田修三選第一席〈三密は避けましょうね鬱の字を大きく書いて風を通しぬ／池田美恵子〉字足らずが気にならない。鬱と書いて気が晴れるという反語的表現が巧み。島田修三選第三席〈おしゃれ着は袖も通さずハンガーにＴシャツだけでひと夏終わる／柴田きみ子〉も惹かれる。田原市からの投稿というのがいい、渥美半島はよく伊良湖岬まで原付や車で行く。半島での自粛生活を思う。小島ゆかり選第三席〈彼岸花の赤い拍手で迎えられしずかに進む秋の舞台に／富井弘光〉無音の拍手が聴こえるよう。小島ゆかり選〈立ちどまり金木犀をかいだ人数式解けたる顔して歩く／熊崎佐千子〉他人の仕草への観察力が光る。〈颱風過 コロナ禍 難化 短縮化 感謝を胸に修学旅行／山本勝太〉評に「下句に十代らしい今年の気持ち」とある。十代で感謝とは偉い。十代のころの私は感謝できなかった。
