以太以外

蒼褪めた巨漢は笑う水澄んで 以太

奥田亡羊『亡羊』短歌研究社

磐田市中央図書館で借りた『亡羊』を読む。〈宛先も差出人もわからない叫びをひとつ預かっている/奥田亡羊〉そして、ときどき誤配したりする。〈のどかなる一日を死者よりたまわりて商店街のはずれまで行く/奥田亡羊〉慶弔休暇だろう。悼むべきだが少し心は浮つく。〈つり革に腕を1000本ぶらさげて明日の平和を祈願している/奥田亡羊〉満員電車という日常こそが平和へ連なる。〈宵宮の金魚すくいの店の上に大きなる赤い金魚ともりぬ/奥田亡羊〉こういうオドロオドロとした装置が日本の昔からの祭そのもののようだ。〈何もない部屋の日暮れに点してはガスの炎を楽しんでいる/奥田亡羊〉青い火は暖炉のように。〈辞令書の四隅の余白広々とさあどこへでも行けというのだ/奥田亡羊〉辞令書の余白の広さは自由のようだが、あくまでもそれは辞令書なのだ。〈明日もまた何もするなと言うような私自身の夕暮れである/奥田亡羊〉そんな夕暮れの空の色であるというのだ、無力感。〈いいと言うのに駅のホームに立っていて俺を見送る俺とその妻/奥田亡羊〉俺?