以太以外

蒼褪めた巨漢は笑う水澄んで 以太

榊原紘『悪友』書肆侃侃房

椿大神社の第三十八回短詩形文学献詠祭の結果を知った日、『悪友』を読む。〈店名の由来はスペルミスらしい指先だけをおしぼりで拭く/榊原紘〉おしぼりで丹念に手を拭くことはない。指先だけと鼻とかを拭く、スペルミスするようなオシャレな店でも。〈舌という湿原を越えやってくるやさしくなりきれない相槌よ/榊原紘〉「舌という湿原」の景の広がりも良いが、湿原が失言であることも良い。〈いつの日か誓いは栞になるだろう 思い出すたび風ふく場所で/榊原紘〉栞は枝折り、「風ふく場所で」が合う。〈ゆるせなくていいよ、このまま区境を越える僕らの傍らに雪/榊原紘〉と〈分かりやすい祝福なんて 手袋の内側の縫い目気になっている/榊原紘〉の並びが人生の越境を暗示していていい。〈パーカーを脱ぐ一瞬の暗闇ののちに滅んでいる国がある/榊原紘〉詩人の戦闘服にも隙はある。〈クリックで買った映画を暗くした部屋にひからせ夜を送った/榊原紘〉「夜を送った」の軽やかさ。