以太以外

辷り台に脚を忘れた虫の闇 以太

所以3

  • 首がもげるほどうなずいたと大袈裟に描写せざるをえないのは、賛意に確たる根拠を持たないから。
  • 〈青春は苦行であると気づくたび眉間を走り抜けてゆく中央線/笹公人〉、連作「異空間アンプ」文藝春秋2022.7。私にとっての南武線が彼にとっては中央線なのだ。
  • 自分の生きづらさを他者の責と捉えている限りその解消は遠い。
  • 原因を外ではなく内におくこと、他者も自分と同じように弱い自由意志しか持たないと知ること。
  • 岩波茂雄は「ゴタだった」という。「ゴタ」とは、諏訪の言葉で「やんちゃ」あるいは「きかん坊」に近い意味があるらしい。(小倉美恵子『諏訪式』亜紀書房
  • 信州人にとって最も確かな宝は「ベクトルを持った人間」であり、「独り立ち」した人間同士が信頼をもって築き上げる人脈なのだろう。(小倉美恵子『諏訪式』亜紀書房
  • 二人して向ひ苦しく思へりし清き心にかへるすべなく/島木赤彦
  • 〈病葉の足裏に親し山の径/綾野南志〉俳句界2022.7、病葉という言葉の感触を足裏に感じているような「親し」だ。
  • 〈金魚飼ふ浦島太郎になりきつて/大橋嶺彦〉「浦島太郎」俳句界2022.7、これは老化以後、誰も親しい者のいなくなった浦島太郎になりきった。
  • 〈遮断機の震へて下りる炎天下/帯谷到子〉俳句界2022.7、炎暑の大気のゆらぎを「震へて」に感じる。
  • 〈A席はずつと海側夏帽子/佐々木啄実〉俳句界2022.7、球場だろうか。もちろん座席の位置は易々とは変わらない。夏の海と球児たちの眩しさがある。「ずっと」が俳諧
  • 〈案山子にはあをき硝子の目を与ふ/日向美菜〉俳句界2022.7、田圃の案山子には硝子の目は合わなそうだけれど、そこへ敢えて硝子の目を持ってくる作為が美意識だろう。
  • 〈方舟の闇になじめぬ黄金虫/足立町子〉「祈りの底」俳句界2022.7、ノアの方舟、その梅雨闇めいた闇にその黄金色が浮いてしまう。
  • 〈円卓の騎士の最後は桃の花/わたなべじゅんこ〉「Fairy Tale」俳句界2022.7、英国中世史話と中華仙人譚とが入り混じった世界観がおもしろい。
  • 第38回麦新人賞を「壊れた公園」でいただいた。〈辷り台に脚を忘れた虫の闇/以太〉