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以太以外

病名は人間性や夕野分 以太

第十二回十湖賞俳句大会受賞句を読む

第十二回十湖賞俳句大会の結果が出た。小学生の部の十湖賞受賞句〈恐竜博士対虫博士休暇明/室内和輝〉に注目、夏休の楽しさをそのまま学校に持ちこんだ休暇明、友人と再会した際の会話の高揚が「対」に表れている。十湖大賞は高校生の部の十湖賞から採られ〈ウミガメを見ている僕も海の中/吉本侑平〉、「も」だから海亀も海の中、夏のあいだに海亀は産卵に浜へ来て海亀の子が孵化し沖へ出る。浜の景であることは確かだけれど海亀の子の景としたら不安とともに旅立つ海亀の子と作中主体が抱く将来への不安とが重なる。一般の部の十湖賞〈噴水は丈の限界超えんとす/木幡忠文〉は噴水が今にも「丈の限界」を超えそうな心中の予感をそのまま表出した。自己の投影でもあろう。中学生の部の十湖賞〈書初めを風呂の鏡で書いた朝/澤口志堂〉は書初を新しく捉えた。その他入選句より、〈盤上の駒は動かず虫時雨/成瀬喜義〉静と騒の対比、〈腹見せて神鳴る空に挑む猫/夏目悠希〉「挑む」と描写して雷と猫の関係をおもしろく捉えている。〈夏の風ホースの水を虹に変え/岡安泰河〉「変え」が科学を超えた詩となっている。〈きみはバラそれにくらべてぼくはこけ/永田理紗〉植物に喩えた自己とも担当植物とも捉えられる点でウナギ文とも呼ばれる日本語の曖昧さを巧く利用している。

風音の映りこむまで墓洗ふ 以太